「十回買って八回当てた。」この言葉を聞くと、すごい実力のように感じます。勝率80%ですから。ところがこの人は口座がマイナスかもしれません。逆に十回のうち三回しか当てなくても大きく稼ぐ人がいます。
どうしてこんなことが起こるのでしょう。答えは、勝率だけでは投資の成績はわからない、というところにあります。今日は勝率と損益比、この二つの数字がどう一緒に動くのかを整理します。
二つの数字とは — 一文で
勝率(win rate)は、全取引のうち勝った取引の割合です。10回のうち7回利益なら勝率70%です。
損益比(payoff ratio)は、勝つときに平均いくら稼ぎ、負けるときに平均いくら失うかの比率です。勝つとき平均プラス30万円、負けるとき平均マイナス10万円なら損益比は3です。
勝率は「どれだけ頻繁に当てるか」で、損益比は「当てるときと外すときの大きさの差」です。投資の最終成績はこの二つの掛け算で決まります。片方だけ見ては絶対にわかりません。
なぜ勝率だけを見てはいけないか
簡単な例で見てみましょう。
A: 勝率90%、損益比が低い。 十回のうち九回当てますが、勝つときは少し稼ぎ(プラス1万円)、一回負けるとき大きく失います(マイナス20万円)。九回で9万円稼ぎ、一回で20万円失う。結果はマイナス11万円です。勝率は華やかでも口座は溶けます。
B: 勝率30%、損益比が高い。 十回のうち三回しか当てませんが、勝つときは大きく稼ぎ(プラス10万円)、負けるときは小さく失います(マイナス2万円)。三回で30万円稼ぎ、七回で14万円失う。結果はプラス16万円です。勝率は低くても口座は増えます。
これが肝心です。高い勝率がすなわち儲かる戦略ではありません。 勝率と損益比を一緒に見て、その掛け算がプラスであってはじめて意味があります。
二つはたいてい引き換えの関係だ
ここに興味深い事実があります。勝率と損益比はしばしば互いに反対方向へ動きます。
高い勝率を追うと、たいてい利益を早く確定し(小さな利益)、損失は長く我慢する(大きな損失)ことになります。よく当てる代わりに、一度の損失が大きい。損益比が低くなります。
高い損益比を追うと、大きなトレンドを狙い、損失は早く切ることになります。大きく稼ぎますが、ほとんどの試みは小さな損失で終わり、勝率が低くなります。トレンドフォロー戦略が代表的に「低い勝率・高い損益比」の形です。
だから「勝率を上げるか、損益比を上げるか」は二つのうち一つを選ぶ問題ではなく、どの組み合わせで掛け算をプラスにするかの問題です。
実戦で気をつけること
この二つの数字を見るとき、よく陥る罠があります。
① 標本が少ないとどちらも信じられない。 十回、二十回の取引から出た勝率と損益比は偶然の可能性が大きいです。十分に多くの取引が積み重なって、はじめてその数字が実力を反映し始めます。
② 平均は分布を隠す。 損益比は「平均」利益と「平均」損失の比率です。ところがたった一度の特大の勝ちが平均を引き上げ、実際にはほとんど負けている戦略が良く見えることがあります。平均の裏の分布を一緒に見るべきです。
③ 心理的な続けやすさ。 勝率30%の戦略は理論的に良くても、七回連続で負けることがあります。その連続した損失を耐えられなければ、良い戦略も守れません。数字上の最適と、実際に守れることは違います。
まとめると
- 勝率 = 勝った取引の割合、損益比 = 勝つときと負けるときの大きさの比率。成績は二つの掛け算で決まる
- 高い勝率がすなわち利益ではない。 勝率90%でもマイナスに、勝率30%でもプラスになりうる
- 二つはたいてい引き換えの関係だ。勝率を上げれば損益比が、損益比を上げれば勝率が下がる傾向
- 気をつけること: 標本不足・平均が隠す分布・連続した損失に耐える心理
「何回当てたか」は話の半分にすぎません。「当てるときいくら稼ぎ、外すときいくら失うか」という残りの半分を一緒に見てこそ、その戦略が実際に儲かるのかがわかります。勝率は自慢の種ではなく、損益比と掛けてはじめて意味の出る、半分だけの数字です。
참고
- 期待値 = 勝率 × 平均利益 −(1−勝率)× 平均損失。この恒等式が二つの指標を一つに結ぶ
- Tharp, V., *Trade Your Way to Financial Freedom* (1998) — 期待値・R倍数の観点の成績評価
- ケリー基準(Kelly, 1956)も勝率と損益比を一緒に使ってベット額を決める
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。特定銘柄の売買を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いします。
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