株を少し勉強すると、最初に出会う指標がPERです。そして、最初に誤解する指標でもあります。
「PERが低い? 割安だ。買おう」
この一行が、口座を長く苦しめることが少なくありません。なぜか、PERを最初から正確に見ていきます。
PERとは — 一文で
PER(株価収益率)はこう計算します。
PER = 株価 ÷ 一株当たり利益(EPS)
かんたんに言えば、「この会社が今稼ぐ利益で、今の株価を回収するのに何年かかるか」です。PER 10なら、その利益が続けば10年で元が取れる、という意味です。
だから直感的には、PERが低いほど割安と読めます。半分は正しく、半分は誤りです。
問題は分母にあります
PERは分子(株価)と分母(利益)の二つでできています。PERが下がる道も二つあります。
- 株価が安くなって下がったか
- 利益が増えて下がったか — でも市場がその利益を信じていなくて、株価が追いついていないか
三つ目が肝心です。市場が「この利益はまもなく減る」と見れば、株価を先に下げて、低いPERが表示されます。それを知らずに「割安」と買うと、利益が実際に減り、株価も一緒に下がります。これをバリュートラップ(割安の罠)と呼びます。
PERが低いよくある理由 三つ
割安に見える低PERの裏には、たいてい理由があります。
① 業績がピークのとき。 景気敏感株(半導体・化学・海運など)は好況の終盤に利益が最大なので、PERが最も低く見えます。その利益がまもなく折れれば、低く見えたPERは錯覚だったわけです。
② 斜陽産業のとき。 市場が「この業種の利益は長期的に減る」と判断すれば、株価を先に削ります。今の利益に対して安く見えても、将来の利益が減れば割安ではありません。
③ リスクが隠れているとき。 負債が多い、訴訟・規制・一時的な利益など「今の利益は続かない」と見れば、PERは低く形成されます。
まとめると — 低PERは「割安」ではなく「市場が何かを心配している」サインかもしれません。その心配が過剰か妥当かを見分けるのが、本当の仕事です。
では低PERをどう見るか
PERだけを見ず、三つを一緒に見ます。
1. 利益が持続可能か。 直近1年ではなく、数年分の流れを見ます。一時的に跳ねた利益なら、そのPERは当てになりません。
2. 同業種と比較したか。 適正なPERは業種ごとに違います。成長産業はもともとPERが高く、成熟産業は低い。別業種とPERを比べるのは意味が薄いです。
3. 他の指標と一緒に見るか。 PBR(資産比)、ROE(資本効率)、負債比率を合わせて見ると、「割安に見える理由」が浮かびます。低PER+低ROE+高負債なら、罠の可能性が高いです。
一行で
低PERは出発点であって、結論ではありません。「割安」という判断は、利益の持続性・業種・他の指標を確認したあとにしか下せません。PERの数字ひとつで買いを決めると、市場がすでに知っていたリスクを、後から引き受けることになります。
次回は、その相棒の指標であるPBRを同じやり方で解剖します。
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。特定銘柄・商品の売買を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いします。
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